老健と特養の違いとは?入所条件やサービス内容を解説
- 医療法人 博順会
- 5月23日
- 読了時間: 13分

▶︎1. 老健と特養の違いとは?

1.1 老健と特養の基本的な違い
老健(介護老人保健施設)と特養(特別養護老人ホーム)は、どちらも高齢者が長期間生活するための施設ですが、目的やサービス内容が大きく異なります。
老健は、在宅復帰を目指すための中間施設という位置づけで、医師やリハビリスタッフによるリハビリや医療ケアが手厚いのが特徴です。一方で特養は、終の棲家としての役割が強い施設で、要介護度の高い方が安心して暮らせるよう生活支援に重点を置いています。
たとえば、骨折後に一時的に入所してリハビリに集中したい場合は老健が適しており、日常的な介助が必要な高齢者が長く安心して暮らしたい場合は特養が向いています。
「老健=一時的なリハビリ施設」「特養=長期的な生活施設」この違いをまず押さえておくことが大事です。
1.2 施設の目的と役割の違い
老健の目的は、要介護者が医療やリハビリを受けながら体力を回復し、自宅での生活に戻れるよう支援することです。そのため、多職種によるケアが体系的に行われており、3~6か月程度の短期利用が基本です。
一方、特養の目的は、家庭での介護が困難な高齢者を、長期間にわたり支援すること。施設内での日常生活を中心に、介護職員による食事・排泄・入浴などの介助が主なサービスになります。
よくある失敗として、
「特養でもリハビリが充実している」と思い込んでしまう
「老健に長く住める」と誤解してしまう
入所後に「思っていた支援と違う」と感じてしまう
といったケースがあります。こうしたミスマッチを避けるためには、目的と役割をしっかり理解することが第一歩です。
1.3 入所条件の違い
老健と特養では、入所できる条件にも明確な違いがあります。
老健に入所するには、原則として「要介護1~5」の認定が必要で、医療的なケアやリハビリが必要な状態であることが条件です。また、医師の診断書や紹介状が必要になる場合もあります。
一方、特養の入所条件は「要介護3以上」であることが基本です。要介護1・2の方でもやむを得ない事情がある場合は例外もありますが、基本的にはより重度の介護が必要な方が対象です。
ここで注意したいのが、
「要介護認定をまだ受けていない」状態で申込をしようとする
「要支援」の方が特養を希望する
医療的ケアが多いのに特養を選んでしまう
といったパターンです。これらは入所の審査で不利になったり、適切なケアが受けられなかったりするリスクがあるので、事前に条件をしっかり確認することが大切です。
▶︎2. 老健と特養のサービス内容の違い

2.1 提供される介護サービスの違い
老健と特養では、受けられる介護サービスの内容や目的が大きく異なります。
老健では、在宅復帰を支援するために、介護だけでなくリハビリや医療的ケアも含めた総合的なサービスが提供されます。具体的には、理学療法士や作業療法士による個別リハビリ、日常生活動作の改善サポート、退所後の生活環境調整などが含まれます。
一方、特養は生活援助を重視した長期的な介護サービスが中心です。入浴、排泄、食事などの基本的な介護に加えて、日々の健康管理や生活全般のサポートが行われますが、医療やリハビリの専門的サービスは限定的です。
以下のような違いが典型的です。
サービス内容 | 老健 | 特養 |
主な目的 | 在宅復帰支援 | 長期的な生活支援 |
介護サービス | リハビリ重視、短期集中型 | 日常生活支援、長期安定型 |
医療的ケア | 医師常駐で手厚い | 簡易的な健康管理が中心 |
サービス提供の期間 | 3〜6か月程度が目安 | 原則として長期入所可能 |
「必要なサービスがどちらにあるか」を軸に選ぶと、後悔のない施設選びがしやすくなります。
2.2 医療・リハビリ体制の違い
老健と特養の医療体制・リハビリ環境の差は非常に大きなポイントです。
老健では、施設内に常勤または非常勤の医師・看護師が配置されており、日々の健康管理だけでなく、病状の変化に迅速に対応できます。また、個別リハビリや集団リハビリのプログラムが整っており、身体機能の維持・回復を目指す環境が整っています。
一方、特養では医療職は配置されているものの、急性期医療への対応は難しく、医療行為は基本的に外部医療機関との連携に頼るケースが多いです。リハビリも、機能訓練指導員による軽い体操や機能維持訓練が中心となり、本格的なリハビリは提供されません。
こんな場面で違いを実感する方が多いです。
定期的なリハビリを続けたいのに、特養では十分に受けられなかった
慢性的な病気があるのに、特養では医師の常駐がなく不安だった
逆に、医療的ケアが不要なのに老健では医療費がかかりすぎた
こうしたすれ違いを防ぐには、入所前に現在の健康状態と将来の変化を見据えたうえで施設を選ぶことが大事です。
2.3 レクリエーションや日常生活支援の違い
日々の暮らしに関わる支援内容にも、老健と特養では違いがあります。
老健では、リハビリや医療ケアが中心になるため、レクリエーションの時間や内容はやや限られる傾向があります。とはいえ、生活リズムの安定や認知機能の維持を目的とした活動は定期的に行われており、歌や体操、軽作業などが組み込まれています。
一方、特養では、生活の質(QOL)を高めるためのレクリエーションが重視されており、施設によっては季節のイベントや手芸、園芸活動などが充実しています。日々の楽しみが得られるような環境づくりがされているのが特徴です。
ただし、こんな失敗例もあります。
「老健でも毎日イベントがある」と期待してしまった
「特養は暇だと思っていたが、意外と活動的だった」
「本人の趣味に合わず、退屈に感じてしまった」
こうしたギャップを防ぐためにも、事前に施設の活動内容やプログラムを確認しておくことが重要です。
「暮らしやすさ」を左右するのは、サービスの内容だけでなく、日々の過ごし方も大きな要素です。
▶︎3. 老健と特養の入所期間・費用の違い

3.1 入所期間の目安と特徴
老健と特養では、入所できる期間やその目的に明確な違いがあります。
老健は、あくまで在宅復帰を前提とした「中間施設」です。入所期間の目安は3〜6か月程度で、一定の期間ごとに退所や在宅復帰の見直しが行われます。リハビリの成果や体調の変化によっては、継続入所が認められるケースもありますが、基本的には一時的な利用が前提です。
対して特養は、長期的な入所を前提とした施設です。特別な事情がない限り、要介護度が高い限りはずっと入所し続けることができます。「終の棲家」として選ばれる理由のひとつです。
こんな失敗がよくあります。
老健を「ずっと住める施設」と思ってしまい、退所時に困った
特養の入所が難しく、待機期間が長くなってしまった
老健の短期入所に対して、在宅支援の準備が間に合わなかった
「一時的なケア」なのか「長期の生活」なのかを見極めて選ぶことが大事です。
3.2 費用の構造と目安
老健・特養ともに、介護保険が適用されるため、自己負担額は抑えられています。ただし、費用の構造と月額の目安には違いがあります。
老健では、医療ケアやリハビリの提供が含まれているため、医療的な加算や人件費が上乗せされやすい傾向があります。月額の自己負担目安は、介護度や所得によっても異なりますが、おおよそ8〜15万円程度が一般的です。
一方、特養は長期入所を想定しているため、比較的低コストで安定した利用が可能です。月額の自己負担目安は6〜12万円程度で、年金の範囲内でまかなえるケースも少なくありません。
費用の内訳としては、以下のような項目が含まれます。
居住費(部屋代)
食費
介護サービス費(1〜3割の自己負担)
日用品・医療費(実費)
以下は概算です。
項目 | 老健の目安 | 特養の目安 |
月額費用 | 約8〜15万円 | 約6〜12万円 |
医療加算 | 多い | 少ない |
リハビリ費 | 含まれる | 基本的になし |
「費用」と「サービスの中身」のバランスをよく見て選ぶことがポイントです。
3.3 費用に関する注意点と対策
費用に関しては、事前に知っておかないとトラブルになりやすい落とし穴がいくつかあります。
よくある失敗は以下の通りです。
「介護保険で全部カバーされる」と思い込み、実費負担を見落とす
日用品や理美容代など、日常の細かな出費を想定していなかった
所得区分による自己負担割合の違いを把握していなかった
これらを避けるためには、契約前に月額費用の内訳を必ず確認することが重要です。
さらに、所得や資産が一定基準以下の場合、「介護保険負担限度額認定証」の申請をすることで、居住費や食費の自己負担を軽減できる制度もあります。負担を減らす制度を活用することで、経済的な不安を減らすことができます。
また、老健と特養では費用の発生タイミングや退所時の清算方法も異なることがあるため、支払いの流れも事前に確認しておくと安心です。
介護施設の費用は「毎月の生活費」として長期間続くものだからこそ、見落としや思い込みを避けることが大切です。
▶︎4. 老健・特養の入所の流れと必要な手続き
4.1 入所までの一般的な流れ
老健・特養いずれも、入所までにはいくつかのステップがあります。
手続きに時間がかかることも多いため、早めの準備が大切です。
入所の流れは概ね以下のようになります。
要介護認定の申請と取得(介護度によって入所可否が決まる)
施設の見学・説明会への参加
入所申込書の提出
面談・健康状態の確認
入所判定会議(施設側による審査)
契約・入所日決定
入所・利用開始
特に特養は、申込みから実際の入所まで数ヶ月〜1年以上待つこともあるため、複数施設への申請や早めの行動が求められます。
老健は比較的早く入所できるケースが多いですが、医師の診断書や入所理由の明確化が求められるため、主治医やケアマネジャーとの連携が重要です。
入所の流れを知っておくことで、慌てずに準備を進めることができます。
4.2 必要な書類と手続き
老健・特養ともに、入所には一定の書類提出が必要です。内容は施設によって若干異なりますが、共通して求められることが多い書類は以下の通りです。
要介護認定通知書(コピー)
健康診断書(医師による診断書)
入所申込書(施設指定の様式)
利用者本人および家族の情報シート
介護保険被保険者証のコピー
収入や資産に関する書類(費用軽減制度の申請時)
老健の場合、病状やリハビリの必要性が入所基準に影響するため、主治医の診断書は特に重要な書類になります。
一方、特養では要介護度の高さと家庭の事情が重視されるため、入所申込書には「介護が困難な理由」などの詳細な記入が求められます。
よくある注意点としては、
書類の有効期限が過ぎていた
書き方の不備で再提出になった
家族間で情報が共有されておらず、準備が遅れた
といったことがあります。
提出期限や書式の指定を必ず確認し、事前に家族で準備を共有しておきましょう。
4.3 入所前の準備と注意点
入所が決まったら、スムーズに生活を始められるように環境と持ち物の準備をしておきましょう。
準備しておきたい主な項目は次の通りです。
衣類(着替え・寝巻き・下着類)
洗面用具・入浴用品
上履き・滑りにくい室内履き
常備薬・お薬手帳
保険証・診察券類のコピー
趣味用品や使い慣れた日用品
ここでありがちな失敗として、
衣類や持ち物に名前の記載がない
日用品が施設のルールに合わず持ち込み不可だった
入所直前に体調を崩して延期になってしまった
などがあります。
老健の場合、リハビリをしやすい服装や運動靴なども必要になります。
特養では長期生活を前提とした「慣れた物の持ち込み」が重視されます。
入所前に施設へ確認し、必要なものをチェックリストにしておくと安心です。
▶︎5. 老健と特養の選び方
5.1 どちらを選ぶべきかの判断基準
老健と特養を選ぶ際に最も重要なのは、入所する目的と利用者の状態に合っているかどうかです。
判断基準として、次のようなポイントが挙げられます。
老健が向いているのは…
医療的なケアやリハビリが必要
一時的な入所で在宅復帰を目指したい
自宅生活に戻る準備をしたい
特養が向いているのは…
要介護度が高く、常に介助が必要
自宅での介護が困難
長期的に安定した生活の場が必要
こうした判断をするためには、まず現在の要介護度、健康状態、家族の介護力を整理することが大切です。
失敗しがちな選び方の例としては、
「空きがあったから」と安易に選ぶ
一時的な入所なのに特養を希望する
医療的ケアが必要なのに特養を選んでしまう
があります。利用者の状態と施設の特徴がマッチしていないと、入所後にトラブルになりかねません。
目的と状態に合った施設を選ぶことが、安心した生活につながります。
5.2 家族や本人の希望を考慮した選択
施設選びでは、利用者本人の気持ちや生活スタイル、家族の事情も忘れてはいけません。
たとえば、
本人が「在宅復帰を目指したい」と考えている
家族が共働きで在宅介護が難しい
住み慣れた地域で暮らしたいという希望がある
こうした希望がある場合は、それに応じて施設の種類を選ぶのが理想的です。
しかし、こんな注意点もあります。
家族と本人の意向がすれ違ってしまう
希望を優先しすぎて、実情に合わない施設を選んでしまう
費用や入所時期とのバランスが取れない
選ぶ際には、ケアマネジャーなど第三者の専門的な意見を取り入れることも有効です。
また、施設見学の際には「居室の雰囲気」「スタッフの対応」「利用者の様子」など、本人が実際に生活するイメージを持てるかどうかを確認しておきましょう。
本人と家族が納得できる選択が、長く安心して暮らすための第一歩です。
5.3 地域の施設情報の調べ方
良い施設を選ぶには、地域にある老健・特養の情報を幅広く集めることが欠かせません。
主な情報収集の方法は以下の通りです。
地域包括支援センターで相談する
介護保険施設のポータルサイトで検索する
ケアマネジャーを通じて情報提供を受ける
実際に施設を見学・説明会に参加する
中でも、地域包括支援センターは公的な窓口として信頼性が高く、施設の空き状況や評判、入所条件などを詳しく教えてくれます。
施設選びで見落としがちなのが、
「立地だけ」で決めてしまい、通院や買い物が不便だった
「人気施設」だと思って選んだが、希望するサービスがなかった
ネットの情報だけで判断して、見学をしなかった
といった点です。
実際に足を運び、スタッフや他の利用者の様子、施設内の清潔感などを直接確認することで、安心して選べるようになります。
情報は複数の手段で集めて、比べながら検討することが大切です。
▶︎6. まとめ:老健と特養の違いを理解して選ぶために
6.1 老健と特養の違いまとめ
ここまで解説してきたように、老健と特養は目的・サービス内容・費用・入所条件など、多くの点で異なります。
以下に、主な違いを表で整理します。
比較項目 | 老健(介護老人保健施設) | 特養(特別養護老人ホーム) |
主な目的 | 在宅復帰支援、リハビリ中心 | 長期生活支援、生活介護中心 |
入所条件 | 要介護1〜5(医師の判断が必要) | 原則要介護3以上 |
入所期間 | 一時的(3〜6か月目安) | 長期(制限なし) |
医療・リハビリ | 医師・リハビリスタッフ常駐 | 医療体制は最低限、リハビリ限定的 |
月額費用の目安 | 約8〜15万円 | 約6〜12万円 |
向いている人 | 自宅復帰を目指したい人、リハビリが必要 | 介護度が高く、家庭での介護が困難な人 |
この違いをしっかり把握しておくことで、ミスマッチを防ぎ、安心できる施設選びができます。
6.2 適切な施設選びのために
介護施設の選択は、ご本人の暮らしと家族の生活を大きく左右する重要な判断です。
「どちらが良いか」ではなく、「どちらがその人に合っているか」という視点で考えることがポイントです。現在の健康状態や要介護度だけでなく、将来的な変化や生活の希望まで見据えて、施設を選ぶ必要があります。
そのために大切なのは以下の3点です。
情報を正しく集める
公的機関やケアマネジャーなど、信頼できる情報源を活用しましょう。
本人と家族の意向をすり合わせる
意見のズレを防ぎ、納得した上で決められると後悔が少なくなります。
必ず施設を見学する
書面やネットの情報だけではわからない「現場の雰囲気」も重要な判断材料です。
介護が必要になったとき、「どこに相談すればいいのか」「どんな選択肢があるのか」を知っているだけで、気持ちに余裕が生まれます。
自分たちにとって最適な選択をするために、早めに情報を集めておくことが安心につながります。
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